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エッセイ 津軽へのラブレター

'01.12.10
須藤 ゆか 【フリーライター】
黒石市生まれ。
週刊誌や月刊誌の取材・編集に携わる。Uターン後、フリーで、タウン誌、PR誌の取材など多方面で活動中。


●●● vol.13 「都市伝説  」  ●●●


先日、青森市内で行われた忘年会場でのこと。いつもチームを組ませてもらっているカメラマンS氏が、ふと言った。

「実は、僕の家の向かいに住んでいる親戚のおばあちゃんが、杉沢村出身なんですよ。」
「エーッ!杉沢村って例の場所でしょ?じゃ、Sさんも実はあの村で生まれたとか?」
「ひょっとして、あの事件の秘密を知ってたりして?」
「そう言えば、テレビ局の人を案内してた村人って、Sさんに似てるよナー」。みんな面白がって、てんでに突っ込みを入れるので、話はどんどん大きくなっていく。
会場のホテルからの差し入れで、ボジョレーヌーボーをたらふく飲んだ私達は、いつにも増してハイテンションなのである。
「勘弁して下さいヨ〜。僕は、生まれた時から青森空港のそばっスよ。ほら前に、新山千春と、ご近所だって話したじゃないですかァ」。

茶髪のサラサラヘア、氷川きよしそっくりのルックスの彼は、撮影に行く先々で「ネェ。『やだねったら、やだねェ』って歌ってみて」と頼まれるらしい。
そんな今風の風貌の彼と、おどろおどろしい杉沢村伝説は、全く結びつかない。だが、その夜の二次会の店では「杉沢村出身のSさんは、顔にモザイクをかけてもらって、テレビの取材に答えていたらしい」というエピソードが、まことしやかに伝えられていた。

そのことがあって少ししてから、たまたま「都市の穴」(双葉社 木原浩勝・市ヶ谷ハジメ・岡島正晃著)という本を読んだ。
これは、誰もが一度は聞いたことがあるけど、真偽のほどはわからないというような、いわゆる都市伝説を集めた本である。
たとえば、「東京ディズニーランドには、一般客にはわからない扉があって、そこは巨大な地下道に続き、スタッフが迅速に移動するために利用している」「病院では死体を洗うバイトがあるらしい」「口裂け女2001」などといった話である。

東京で雑誌の仕事をしていた頃、海外に出張する女性編集者の間では、「洋服屋の試着室には要注意」という暗黙の了解があった。
ある編集者の知り合いのそのまた友人が、ハネムーンで中国に行った時のこと。何分たっても試着室から出てこない妻を不信に思った夫が、店の人に尋ねたところ、「今日は、試着室には誰も入っていない」の一点張り。「そんなはずはないだろう」と、カーテンを開けると、試着室はモヌケのカラ。後日、試着室には秘密のドアがあり、妻は闇の組織にさらわれたことが発覚したと言う。

それを聞いた当時の私は、恐ろしさで震え上がったものだが、その本を読んだら、同じような話が載っていた。となれば、あれも一種の都市伝説に過ぎなかったのかも知れない。

こうした話に共通しているのは、「兄の友人が話していた」とか、「親戚が知り合いから聞いた話だけど」というふうに、体験者と語り手が、きわめて間接的な関係にあることだろう。
語り手=体験者であるケースは、まず聞いたことがない。
それともう一つは、「もし、こうだったら怖いな」、「ああだったら面白いのに」というふうに、人々が心の隅に抱く恐怖や願望の「ツボ」に程よくはまっていることだ。そのことで、より真実味が増し、一種のコニュニケーションツールとして、伝播力をもつのではないかと思う。

ところで、「津軽版都市伝説」なんてのも、かなり存在するらしい。あなたが、知っている都市伝説はどんな話ですか?


●須藤ゆかエッセイ ばっくなんばー

『犬も歩けば・・・』
   


『津軽へのラブレター』