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 〜 お花見エッセイ 〜 『 ガサエビちゃんと、トゲクリガニ君 』


   がさえび           
がに
 

 「津軽の『お花見』に欠かせないモノは何か?」と聞かれ、「ガサエビと、トゲクリガニ!!」と、即答した人は、かなり津軽人血中濃度が高いといえるだろう。
 「お花見」のことを、まだ「観桜会(かんおうかい)」(※正調津軽弁では、『カンゴ会』と発音する)と呼んでいた時代から、この二つは、花見の席に君臨していた。
 「ガサエビ」は、いわゆる寿司ネタでもよく使われる「シャコ」であるが、津軽では、生きたまま殻付きの状態で、塩か醤油でさっと煮て食べる。これが抜群にうまいっっ!!エビからすれば「五右衛門風呂」であるが、鮮度は命。いたしかたない。

 和名では「トゲクロザコエビ」というらしい。なるほど、足にも尾にも鋭く細かいトゲがびっしりあるわけだ。食われてたまるかと、ここまで過激に全身ガードしてるってことは、逆に「あたしって、おいしいのヨン♪」と、アピールしているようなものではないか?ところで、青森市中央卸売市場「青森魚類株式会社」のHPを見ていたら、すごい生態が明らかになった。それによると、ガサエビのカマキリの鎌みたいな部分は捕脚で、それを使ってアサリなどの貝に肘打ちをくらわせて、殻を砕くのだとか。ちょっと、「肘打ち」!!!って、すごくね?ガサエビちゃんは、相当血の気の多い、やんちゃ娘なのであった。

 ところで、なぜに「ガサ」か?知り合いの釣り男に聞いたら「バケツの中で、ガサガサ動き回るハンデでねんず?」と言っていたが、定かではない。

 一方「トゲクリガニ」。別名「花見ガニ」、「陸奥湾の毛ガニ」とも呼ばれるほど、旬のこの時期は味がのり、磯の風味が豊か。濃厚なカニ味噌、メスの内子(卵)がまた絶妙なのだ。食べ終わった甲羅にお酒を入れて呑む。ああ〜、悶絶!!

 以前、弘前公園内のピクニック広場で、お花見パーティーを行ったことがある。桜は満開、宴にふさわしい絶好の雰囲気である。ところが、宴会が始まってすぐのこと。市場でゆでてもらったばかりのガサエビと、トゲクリガニが到着した途端に、座の空気に緊張が走った。頭上で「カーン」とゴングが鳴り、全員が戦闘態勢に入った(ような気がした)。それから小一時間というもの、誰一人ひとことも話さず、黙々と身をほじくる有様であった。なかには、カニの殻で口びるを切り、流血している若い女性もいたが、そんなことはお構いなしという形相でひたすら食べ続けていた。結構、シュールな光景であった。

 風流に桜を愛でながら、おおいに花見の席を盛り上げるためには、エビ・カニを出すタイミングは充分計算が必要である。津軽では、花見席における幹事さんの手腕が問われる、最大の駆け引きともいえよう。
 「花より団子ならぬ、花より甲殻類」。それが、津軽の正調お花見である。

 

【 須藤 ゆか  (フリーライター) 】 
黒石市生まれ、弘前市在住。週刊誌や月刊誌の取材・編集に携わる。
Uターン後、フリーで、タウン誌、PR誌の取材など多方面で活動中。