vol.1
「津軽弁騒動記」
(後編)その1
津軽弁は,奥が深い
同じ津軽弁でも,世代や地域によって,さまざまに表情を変えるのも面白い。
結婚前に,初めて夫の家に挨拶に行った時のことだ。彼の実家は,木造町で農業を営んでおり,四世代同居の大家族。一通り,家族の紹介が終わった後,彼のお母さんが妙な名前を口にした。
「ジョニー・トロピカル」
はて,ジョニーとは,いったい何者だろう???
家族以外に同居人がいる話しは聞かされていないが,結婚の挨拶の席で家族と同等に紹介されるくらいだから,よっぽどの存在であることには違いないだろう。もしや,お父さん,若き日の出稼ぎ先で過ちを…?と,さりげなく横目でお父さんを観察するが,すでに熱燗がまわってほろ酔い加減のその姿は,どこから見ても,日本の正しいお父さんである。
とすれば,客人だろうか。なんたってここは,世界的に名高い亀ケ岡遺跡のある場所。遮光器土偶だって発見されちゃうロマンの街だもの,ジョニーやエリザベスの一人や二人いたって不思議はない。そうだ。そうに違いない。私は,いついかなる場面においても,瞬時に状況を把握する,自分自身の発想の豊かさと広がりにうっとりとしながら一人うなずいていた。(その2へ続く)