vol.1
「津軽弁騒動記」
(後編)その2

ところが,私が深い考察をめぐらしている間にも,何やらみんなゾロゾロ居間を出て奥の座敷の方に移動し始めるではないか。 こっそりと夫にリサーチしてわかったことであるが,「ジョニー」と聞こえたのは,津軽弁で「常居(ジョイ)」で「居間」を指し,「トロピカル」は「とろける」で「片付ける」という意味。すなわち,「居間は狭いので,座敷に移動して,ここは片付けますね」ということだったらしい。私は,いついかなる場面においても,思い込みの激しい自分自身を呪いながら,座敷へと向かった。
二間続きの和室がスコーンと開け放たれ,広々とした空間が広がっている。「ささ、こごサ,ネマイヘ」。「んだ,んだ,ネマレバよん」。「ねまる」は「座る」という意味だが,その時,私はなぜか,「ねまる」は,「ながまる」(横になること)と同一のものだと信じきっていた。素直なのは,私の唯一の長所である。私は,「はい」と答え,その場に横になろうとした。一瞬,部屋がシーンと静まり返った。あっと思ったが,あとの祭りである。 冷静に考えてみれば,どこの世界に,初めて訪問した婚約者の家に入るなり,ごろんと寝るオンナがいるだろう。しかし,なぜかその後,妙に場が盛り上がり,話は進み,私達は結婚した。
木造の人達は,本当に人間が出来ている。(その3へ続く)


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