vol.3
「祭りのゆくえ」
その2
そんななか、昔ながらの自由運行にこだわっているのが黒石ねぷたである。
二日間の合同運行日以外は、町内ごとに自由に街を練り歩く。城下町の古い街並みを背景に、ゆらりとねぷたが現れる様子は、非常に幻想的で、どこでねぷたと出会うか分からないワクワク感がある。
昨年、ある取材で、お囃子の後継者育成を目的に開催している「正調黒石ねぷたばやし講習会」の会場を訪ねる機会があった。入り口から一歩足を踏み入れて、思わず息をのんだ。幼稚園児から、高校生まで総勢七百人の子ども達が、笛や、太鼓、鉦の練習に、真剣な面持ちで取り組んでいるのだ。
祭り本番では、この子ども達が自分の町会のお囃子を奏でる。茶髪にピアスのお兄ちゃんも、見事なバチさばきで沿道からは拍手喝采。よちよち歩きの赤ちゃんも、アネサマも昔のアネサマも、ジサマもバサマも、参加する人全員が主役の祭り・・・。
老いも若きも土地の人もよその人も、祭りという同じ時間軸のなかで、純粋に楽しさを共有できるのだ。庶民の祭りの原点ともいえる、こんなシンプルで温かな光景が、今や貴重になりつつある。
日本中の祭りを一様に産業化し、観光資源としての価値に主眼を置いてきたがために、私達は何かを置き去りにし、締め出してきたのかもしれない。
黒石ねぷたには、そんなことを気づかせてくれるエキスがぎゅっと詰まっている。(終)