vol.8
「津軽の味っこ」
その1
九月も末になろうとしているのに、週末が何かと慌しく、今年はまだ嶽きみを食べに出かけていない。
「お醤油がじゅわーっと香ばしい、焼きとうもろこしが食べたい〜。ゆでたてのきみをアッチッチなんて言いながら頬ばりたいヨ〜」と、悶々としていたら、岩木山が嶽きみに見えてきた。心なしか、山頂から湯気までのぼっているようにも見える。重症だ。きっと、禁断症状に違いない。
早速、岩木山の麓まで車を走らせる。
澄みきった空に、刷毛ですーっとなでたような雲。午後の柔らかな日差しが、田んぼで昼寝中のネコの背中を、金色に染めている。こんなに気持ちのいい天気は、一年のうちでも、めったにあるもんじゃない。刈り取ったばかりの稲からは、ひなたくさいような、子どもの頃から細胞の隅々にまで染みこんだ、津軽の秋の匂い。
途中、近くの産直所に立ち寄る。何を隠そう、私は自他共に認める、大の産直所フリーク。取材で、県内どこへ行っても時間の許す限り、立ち寄る。もちろん、地場産の新鮮な野菜などが、安く手に入ることも魅力のひとつ。でも、それだけではない。レシピには書き表せないその土地ならではの味、手から手へ受け継がれてきた伝統の味が網羅された、食文化の見本市のような気がするのだ。
(その2へ続く)