vol.8
「津軽の味っこ」
その2
学生時代、一年間だけ埼玉県の女子寮で暮らしたことがあった。北は青森から南は沖縄まで、全国から集まった二十人くらいの女子学生がワイワイガヤガヤ。それぞれの実家から送ってきた食べ物を交換し合っては、初めての味に驚いたり感激したりした。「酒盗」や「ままかり」の味を教えてくれたのは、土佐出身の漁師の娘。静岡の友人の家からは、北国ではお目にかかれない柑橘類、沖縄からは「ゴーヤ」。ある時、福島出身の友人に荷物が届き、みんながワクワクと見守るなか、タッパーウエアを開けると、びっしりと「イナゴの佃煮」が入っていたこともあった。東北ではさほど珍しくないが、南の出身者たちは気絶しそうになっていた。
荷物が届いた日は、誰からともなく、故郷の食べ物の話に花が咲いた。味の記憶は、幼い頃の懐かしい光景や、一緒に食卓を囲んだ人達のことを瞬時に思い出させてくれる。いつもは賑やかな友人達も、ほんの少しだけ口数が少なくなった。
日本は小さな島国だけど、バラエティーに富んだ調理法や、食文化の奥の深さには目を見張るものがある。これからの時期、津軽では、秋に収穫したものと、春に採って保存しておいた山菜や、干した魚などを絶妙に組み合わせて、さまざまな料理が味わえる至福のシーズン。身も心もポカポカに温まる「じゃっぱ汁」に「たつ汁」、「鮭の飯寿司」に「サモダシの塩辛」、「鱈の子和え」。風邪をひいた時にもよく作ってもらった、津軽の定番「貝焼き味噌」。
あなたの「ベスト オブ・津軽の味っこ」は何ですか?(終)