vol.10
「女の舞台裏」
その1

「水の入ったブラジャーがあるんだって」という話が聞こえてきたのは、喫茶店で人を待っていた時のことである。声の主は、後ろのテーブルのOLらしき五人組。
「えっ、○○ちゃん、知らなかったの?みんな使ってるよ。実はサ、アタシ今日つけてるんだけど・・・・ゴニョゴニョゴニョ」
「うっそー!ゴニョゴニョゴニョ」。
私は、ゴニョゴニョゴニョの部分が聞きたくて聞きたくて、たまらない。椅子の背もたれに思いきり体をのけぞらせ、耳に全神経を集中させる。 ふと見ると、隣の席のサラリーマン風の二人連れも、斜めの人も、お店の人も、みんな耳がダンボになっていた。それにしても、下着に水が入っているなんて、一体どんな構造になっているのだろう。「水ブラ」のお姉さんに頼みこんで、トイレでちょっとだけ見せてもらうわけにはいかないだろうか。 そうしているうちに、五人組は帰り支度を始め、私の頭の中には膨大な数の、?マークだけが残された。ところで、話は変わるが、今年は久々に黒が流行しているとか。 八十年代初め、爆発的に黒が流行ったことがあった。 川久保玲や山本耀司といったデザイナーの影響もあり、街には黒い服をまとった人々が溢れ、「カラス族」という流行語まで誕生した。その頃、私はまだ学生だったが、ひょんなことからアンアン編集部で、データマンの仕事をすることになった。当時の写真を見ると、髪の毛を刈り上げ、黒い服に身を包み、ガチガチに気負った十代の自分がいる。

(その2へ続く)


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