vol.10
「女の舞台裏」
その2

先日、ファッション評論家が、「黒が流行るのは、不景気で、時代が不安定な時。人も精神的に揺れ動いている時だ」ということを話していた。当時の私は、自分のなかの何かを表現したくて、いつもエネルギーが飽和状態だった。ミニコミ誌を発行したり、自主映画を撮ったり、遊びでミニFM局のDJなんてのもやっていた。それでいて、津軽で培われた自分のなかの体内時計と、現実の時間とのギャップに漠然としたジレンマを感じていた。臆病で不安な自分。それを悟られまいと突っ走っていた私にとって、黒い服は、負の気持ちを包み隠してくれる、隠れミノのような存在だった。そんなわけで、黒い服を見るとなんだかせつなくなってしまう私だが、年を経た今なら肩の力を抜いて、ラクに着こなせるような気がする。
早速、デパートへ黒い服を物色しにでかけた。と、そこで私はなんと、例のブラを発見したのである。カップの中に入っているのは、水ではなく、オイルとプラスチックの粒子だそう。試着してみたが、ぷにゅぷにゅとした感じは本物の胸に限りなく近く、女の私でもわからない。ウーン、下着も日々進化しているのだ。勝手に納得してたら、一枚のポスターが目についた。「三重構造の強力パワーでお腹を引っ込めるガードル」。これだ!かつての悩める乙女は、おばさんとなり、心の隠れミノはもういらない。その代り、今度は、ぜい肉の隠れミノが必要になってくるなんて、本当に皮肉だ。 女の舞台裏は、何かと忙しいのである。 (終)


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