vol.17
「魅惑の旧正マッコ市」
その2

ところで、マッコ市における正攻法は、言うまでもなく早起きであろう。午前一時、二時ともなれば、完全防備したオガサマたちがノソノソと集まってくる。独身の時、友達と飲んで騒いで家に帰る途中、オガサマの大群と出くわした時は、とても驚いたものだ。巣鴨の「とげぬき地蔵」にもひけをとならいほど、オガサマ率は高い。そして、みんな早起きである。 こりゃ、どうがんばっても勝ち目はないと悟った私は、長年にわたる研究の結果、新たなる秘技を編み出した。「予約マッコ」である。前日までに商品を下見してお取り置きしてもらうと、特別に予約マッコが付いてくるのだ。これなら、お昼頃にゆっくり出かけても大丈夫。混雑した店で商品を選ぶ手間も省け、一石二鳥である。 夕方になると、こみせ界隈の通りでは三百本のろうそくに火がともされ、あたりはほんのりやわらかな光に包まれる。雪見酒会に三味線ライブなど、手作りの催しが古い街並みに映え、独特の雰囲気を醸し出している。 また、市内のいたるところに趣向を凝らした、雪だるまが飾られている。美容院前には、メークとカツラでお洒落したコギャル風の雪だるま。家具屋は、タンスを型どったもの。引き出しが半開きになっているあたりが芸が細かい。四世代家族だろうか、大小八個の雪だるまにそれぞれの願い事を託した、ほのぼのしたものもあって、寒さも吹き飛ぶようだ。 さて、我が家の今年のターゲットは、冷蔵庫に、夫の背広、眼鏡である。チラシによると、冷蔵庫を買うとテレビが付いてくるという。前日に、夫と背広を予約しに行ったら、店の人が「明日のマッコは奥さん一人では絶対に持てないから、旦那さんも来て下さいね」と言う。その言葉に、さらに期待が高まる。トラックを借りて行くべきか真剣に悩む私に、夫はクールに言い放つ。 「あのオガサマたちと、ほとんど同化してきたよ」。フンである。 一四億円のマッコとは生涯縁がなくても、庶民のささやかな娯楽「旧正マッコ市」とは、この先もずっとお付き合いしたい私である。
(終)


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