vol.18
「白い宝物」
その1

子どもの頃の記憶のなかには、いつも雪がある。 初めて雪が降った日の朝は、目が覚めるとすぐわかる。ピーンと張りつめた空気の匂い。雪に光が反射して部屋中が明るい。布団をガバッとはいで、急いで着替えて外に出る。まだ、誰も踏んでいない雪にさわるワクワクした気持ちは何にもたとえようがない。やはり、雪がうれしくて飛び出してきたのか、近所の家々の玄関先では子どもたちがはしゃいでいる。 シバレた日は、窓に氷の花が咲く。美しい幾何学模様は、まさに自然が作り出す造形美だ。 新雪に顔をギュッと押しつけて「顔形」を作る遊びも流行った。ある日、クラスメートから「カラスに顔型 突っつがれればダッキャ、死ぬんだヤ」と驚かされ、家の前の自分と妹の顔型がカラスに見つかってはいまいかと、学校から一目散に帰ったこともある。 父が作ってくれたかまくらの中で、妹や従兄弟と食べたお餅の味、みんなでやったトランプ遊び。灯り用にしつらえたろうそくの炎が雪に触れた時、とけずにジリジリと焦げた驚きは、今も忘れられない。 中学校は、木造の古い校舎で、教壇の近くには薪ストーブがあった。 くじ引きで決まった私の席は、ストーブの真ん前。ただでさえ顔の火照りやすい私は、一日中「金時の火事見舞い」の形相。恥ずかしいので、いつも下を向き、パチパチと薪のはぜる音を子守唄に、一人夢の世界をさまよってばかりいた。当然の報いとして、成績はさっぱりだった。
(その2へ続く)


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