vol.18
「白い宝物」
その2
今頃の季節になると、こみせの造り酒屋からは、お酒の香りが立ちこめてきた。気温が低い冬場は、雑菌の繁殖が少いため、酒造りの適期なのだ。
店先に、「寒仕込み」「新酒」といった張り紙が出されたかと思うと、男たちは白い息を吐きながら、次々に荷積みに追われていた。
里の春が終わる頃、雪どけの岩木山に、雪形が見えてくる。「下りウサギは田植えの準備」「上り犬は豆まきの適期」。こんなふうに農家の人たちは、作業時期の目安にしたのだと言う。農業技術が発達していなかった昔、それは農事暦や自然暦として大切な情報源だったのかも知れない。
また、雪氷の冷気によって冬場の貴重な食料を保存する「雪むろ」や「氷むろ」も、雪国の暮らしのなかから生まれた知恵である。最近では、雪のもつこうした自然エネルギーに着目し、農産物の雪中貯蔵施設や、雪冷房システムなどの導入が本格化してきているのは、うれしいことだ。
二月の初め、青森市で「北方都市会議INあおもり」が開催された。これは「冬は資源であり、財産である」をスローガンに、世界の北方都市が参加して、街づくりや雪のなかの暮らしを考えようという国際会議である。会議のテーマは多岐にわたり、実にさまざまな意見が出されたが、参加してみて感じたのは、従来の「克雪」型の発想から、「利雪」「親雪」といった方向に、人々の関心が向かっているのではないか、ということである。
「白い悪魔」は、反面「白い宝物」でもある。雪国に住み、そこで暮らすいたみも全て知っている私達にしかできないことがあるのかも知れない。このところの陽気で、庭のコブシの芽もだいぶふくらんできた。
「山笑う」季節も、すぐそこ。
(終)