vol.19
「津軽の音色」
その2
先日、竹山の直弟子にあたる、西川洋子さんという方に、インタビューする機会があった。西川さんは現在、青森市で、正調民謡の店「甚太古」を経営している。弟子入りは、高校二年生の時だった。自然が好きだった竹山は、よく民謡の会の仲間と共に、八甲田山の蔦の七沼巡りに出かけた。目の不自由な竹山の手を引くのは西川さんの役目だが、ある時、竹山が不思議なことを言い出した。「あの洞窟の奥サ、もう一つ沼あるんだ。そごサ、白い魚いるベ。わど同じでメグ(盲目)だね」。のぞいてみると、本当に白い魚が泳いでいて、居合わせた人達は一様に驚いたと言う。「『高橋竹山に聴く』佐藤貞樹著 集英社新書」のなかで、竹山は「私は眼でものを見られないから心でものを見るしかありません。不自由なことですが、かえってそのために良くものが見えるということもあるようです。同じように、音も、耳で聞くだけでなく心で聴かなければ、いのちの音は聴こえないのだな、と思っています」と話している。四年前、八十七才でその生涯を閉じた竹山だが、彼が演奏するテープを聴くたび、自分のなかの津軽の根っこの部分を鷲掴みにされるような思いにかられる。心で見る、心で聴くとはどういうことだろう。彼は、私達に大きな宿題を残して逝ったのかもしれない。
(終)