vol.20
「さくら さくら」
その2
ところで話は変わるが、以前お目にかかった方から、弘前公園の桜の剪定枝で染めたハンカチを頂戴したことがある。淡いサーモンピンクのベースに、桜の地模様が浮き出て、何とも言えない優しい色合いである。下さったのは、青森市に住む樹木医の斎藤嘉次雄さん。文字通り樹のお医者さんで、幹の手触り、葉や枝の色や形を診断したうえで、土壌を改良したり、肥料を与えたりするのが仕事である。平成三年に林野庁が新設した制度だが、県内の有資格者はまだほんのわずかだという。
弘前公園の桜も、こうした樹木医や、多くの専門スタッフの特殊技術に支えられている。独自の手入れ法と、その技術レベルにおいては、全国はもちろんのこと、海外からも称讃される水準のものであるらしい。
そんな話を聞いてから観る今年の桜は、よりいっそう胸に迫ってくる気がする。わずか一週間ほどの花のはかなさもまた、一期一会にも似たせつない思いに拍車をかけるのである。
(終)