vol.13
「あんなオシゴト、こんなオシゴト(前編)」
その2
「わさび醤油をつけて食べれば、大トロの味がするんだな」と、シュウマイ。大トロ?赤身のマグロは食べたことはあるが、大トロにはご縁がない。食べたことのないものを、食べたことの味で例えられてもさっぱりわからないが、すでに私の頭の中は、好奇心ではちきれんばかり。
「あさってから来られるんだったら、あんたでもいいよ」と、シュウマイ。「あんたでも」という言い方がカチンときたが、私は「どうぞよろしくお願いします」と、ペコリと頭を下げた。
バイト初日、私に与えられた小さなスペースをどうやったら1番有効に使えるかを考え、エスカレーターから降りてくる人にも、エレベーターから降りてくる人にも目立つように商品を配置してみた。某有名女優が美肌のためにアボカドを常食している話や、限定発売であること、それと、なんちゃって大トロの話も盛り込んで、私はしゃべりまくった。
人の心理として、人だかりができている場所はちょっとのぞいてみたくなるものだ。アボカドは売れに売れた。1週間で売る予定だった商品は、数日で完売。バイトの最終日、シュウマイは相変わらず無愛想な顔で、お給料袋を渡してくれた。そして、「はいこれ」と、アボカドを数個くれた。アパートに帰って食べてみたが、濃厚で不思議な感じの味だった。
ちょうど同じ頃、知り合いが体験したバイトは、かなりインチキなものだった。よく、ダイエット食品のチラシにビフォーとアフターの写真が載っているが、これを同一人物で、「同じ日」に撮影するというのだ。まず、水着姿でアフターを撮り、次に洋服を着てビフォーを撮る。この時、洋服の下に、バスタオルをパンパンに詰め込むのだ。ご丁寧に、口の中には綿まで入れるんだそうな。すると、たちまち「8キロダイエットに成功し、笑顔を見せる○子さん」の出来上がり。しかし、こうしたやり方もあざといが、「いいですよ」と引き受けた彼女もすごいと、たまげてしまった。
(終)