vol.20
お犬様が通る
その1

某テレビコマーシャルに登場するチワワ人気もあってか、世はペットブーム。先日もテレビを観ていたら、雨の日のお散歩用レインコートや、防寒ウエアなるものを紹介していた。どちらも犬用だが、びっくりするほど高価である。それだけではない。宝石がついた首輪に、ゴールドチェーンのブレスレット。不景気だと言われながらも、こうしたものが結構売れているというのだから、わからない。 番組に登場した犬は、興奮しているせいもあるだろうが、キャンキャンと終始吠えっぱなし。ブランド品のファッションに身を包んでいかにもお澄まし顔だが、テレビのレポーターのマイクに噛みついたり、グルルルと威嚇したりする。 実は、私も初めて訪問した取材先で、閉口した経験がある。さる資産家のお宅なのだが、室内に通されたとたん、2匹の小型犬が私めがけて突進してきた。ショルダーバッグをグイグイ引っ張るヤツは、鈴木宗男似の丸顔犬。ズボンのすそを噛んで離さないのは、眉毛のあたりが塩爺似だ。 私はカメラを守ろうと必死で両手を高くあげたのだが、それがアダとなった。遊んでもらっていると勘違いしたヤツらは、ピョンピョン跳びはねながら、じゃれだしたのだ。おかげでおろしたてのジャケットはズタボロ。日専連のローンだってまだ残っているのに、どうしてくれる!見れば、2匹とも私のジャケットよりはるかに高そうなお召し物。憎たらしさに、さらに拍車がかかる。 私は飼い主である奥さんに救いのまなざしを向けるが、いっこうに気づいてくれない様子。せいぜい、「まあまあ、○○ちゃんたら、オイタしたらダメでちゅよ」と声をかけるくらいだ。「ささ、コーヒーでも・・」と運んできてくれたが、塩爺のでんぐり返しによって見事にひっくり返された。 取材を終えた頃には、私の髪の毛は鳥の巣状態、洋服はヨダレとひっかき傷でグジャグジャである。さらに、致命的だったのが奥さんのひと言だ。「ごめんなさいね。うちの○○ちゃんたちって、お客さんが来るといつもこうなんでちゅよねェ」。いつもですと?!ならば、こいつらはいつもこんな振る舞いをし、飼い主はそれを許しているというのか。
(その2へ続く)


エッセイ目次へ戻る
Topへ戻る