vol.23
仕掛け花火
その2
庭の七輪で焼いてくれる、ほっぺたが落ちるほどおいしい焼き肉、山で拾ってきたドングリを使ったキーホルダー作り。また、多趣味だった父は、当時貴重品だったカメラで撮影したいろんな写真を見せてくれた。なかでも子どもたちの関心を集めたのは、抜け殻から出たセミが、濡れた羽を乾かし飛び立つ瞬間までをとらえたコマ送りの写真である。父は、子どもたちに見せたくて、何時間も木のそばにかがみこんで撮影したという。
近所に住む年の近い従兄弟達は、いつも父のそばに集まり、その手元から生まれてくるモノを見るのが好きだった。子どもたちが笑うと、父も顔をくしゃくしゃにして喜んだ。
だが、それから10年程して、父は食道ガンであっけなく死んでしまった。
当時の共通の思い出をもった従兄弟たちも、いつしかそれぞれ人の親となった。我が子と過ごす何気ない瞬間、ふと、父が子どもたちに伝えたかったもの、見せたかったものがわかるような気がする。
父は、50年という短い生涯のなかで、子どもたちの心に、たくさんの仕掛け花火を残して逝ったのではないか。何気ない日常の暮らしに父の姿がオーバーラップする時、あらためて父の思いに寄り添える気がするのだ。
私が花火を好きな理由は、そこに大好きだった父の姿を重ねているせいかもしれない。
もうすぐお盆。父が仕掛けてくれた思い出の花火は、今でも鮮やかに私たちの心に咲いている。
(終)