vol.28
おれおれ
その1

「おれだよ、おれ」と、電話をかけてお年寄りから現金をだまし取る「おれおれ詐欺事件」が後を絶たない。そんななか、先日新聞を読んで驚いたのは、青森県内でも同様の詐欺が急増中という記事だ。県警捜査二課によると、4月以降、既遂10件、未遂5件、被害総額はナンと700万円以上に及ぶというのだ。そして、驚くべきことに先月だけですでに12件も発生している。 手口は、全国で発生している事件と同様に、孫などを装った若者が弘前や八戸に住む高齢者に電話をかけ、「暴力団に監禁されて、期日までにお金を払わなければ殺される。おばあちゃん、助けて!」とか、「交通事故を起こしたので、修理費や治療代を払わなければいけない」など、言葉巧みに泣きつき、首都圏の銀行口座に入金させるという手法だ。 これを読んで、まっさきに浮かんだのは、なぜ青森でこのやり口が通用したのか?という疑問である。青森では、身内に向かって自分のことを指すとき「おれ」なんていう言葉は使わない。たとえば、津軽弁では「おれ」に相当する言葉は「わ」あるいは「おら」。「おれだよ。おれ」なんて、標準語で電話した日にゃ、「ワイハ。あんだ、どぢらさんですべ?」なんて、かえって疑われる要因になりかねない。ディープな方言は、犯罪の障害にはならなかったのか? もしスムーズにいったとすれば、青森県民をだました犯人は、青森の方言が話せる本県出身者か、もしくは首都圏で暮らす家族を装った県内在住者か・・・。それとも、きょうびの都会に住む地方出身者は、実家に電話する時も標準語で話すのが常識なのだろうか? いずれにしても、想定したくない嫌〜なシチュエーションばかりである。 お年寄りと暮らした経験がある人ならわかると思うが、彼らは、その年代の人でなければ理解し得ないある種の泣き所を抱えて生きている。 私は、両親が共働きだったので、祖母を母親代わりに育った。ミルクを飲ませてもらうのも、おしめを取り替えてもらうのも、昔っこを聞かせてもらうのも祖母だった。
(その2へ続く)


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