vol.28
おれおれ
その2

だからこそわかるのだが、日中、年寄りと子どもしかいない家には、悪徳訪問販売など実にさまざまな勧誘の人がやってくる。八戸で生まれ東京で関東大震災を経験し、その後、新天地を求めて樺太に渡り、最後に津軽にたどり着くという、人生の半分を流浪しながら生きてきた祖母にとって、見捨てることのできない境遇の人はたくさんいた。 「戦地で両足を失い、この有様でして・・・」と、泣きながら施しを受けに来た男が、お金を手にするや否や、上着の下に隠していた失ったはずの足で駆け出したり、懐かしい南部弁を話す行商の老婆から、市価より高い切り花を山ほど買い求めていたこともあった。 他人事とてそこまでしてしまう世代、離れて暮らす孫のこととなれば、冷静な判断ができなくなってもおかしくない。泣きながら電話してきた若者を孫と勘違いし気が動転し、つい現金を振り込んでしまう。 だまし取られた金銭ももちろん惜しいが、一番哀しいのは、そうした事件に巻き込まれることによって、お年寄りが家族や親戚から非難され、自分の居場所を無くして余生を送ることではないか。 孫の身を案じるお年寄りの気持ちを逆手に取るやり口を横行させないためにも、もし、あなたが家元離れて暮らす立場だったら、ぜひ定期的に家に電話してほしいと思う。まめにコミュニケーションすることで、金銭では穴埋めすることのできない大切な人の尊厳を守ることができるのなら、電話代など安いものだ。私は別に、電話会社の回し者でもナンでもないが、これ以上失意のどん底に落とされるお年寄りを増やさないために、心からそう願うのだ。
(終)


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