vol.29
レクイエム
その2

数日前、友人の旦那さんが急死した。43才という若さだった。気づいた時は、ガンがすでに転移していた。中学校の教師をしており、明け方まで中間テストの問題を作り、早朝出勤。そして学校で倒れ、病院に運ばれたものの帰らぬ人となった。 1年前ガンを宣告され、それを受け入れて、残された時間を最後まで生徒たちと過ごすことを自分で選択したという。 お通夜の会場には、中学生はもちろん、高校生、大学生など、かつての教え子達が大勢駆け付けた。会場近くの最寄り駅は、何十人もの生徒でひしめき合い、泣きじゃくる声が会場にこだました。 翌日のお葬式で喪主である奥さんがこう述べた。「昨日はたくさんの生徒さんにいらしていただいて本当に有り難く思います。こんなにも生徒さんから慕われていた父親の姿を娘達に見せてあげることができ、幸せです」。 遺された幼い子どもたちにとって、その日の光景は父が遺した最大のプレゼントだったのではないか。普段、家で仕事の話をすることがなかったというが、命をかけて立ち向かった生き様にふれ、強烈な印象を残したのではないだろうか。 父を誇りに思う気持ちは、これから先の子どもたちの人生を明るく照らしてくれる灯火の光だ。 生徒たちからたくさんの勲章をもらって、ご主人は天国へ旅立っていった。 心からご冥福をお祈りいたします・・・。
(終)


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