vol.36
猪突猛進型人生
その1
先日、テレビを見ていたら、偶然東京にある高田馬場の光景が映し出された。この街は、私が学生時代を過ごした所であり、路地裏の隅々にまで思い出が染み込んでいる場所だ。この街で熱心に勉強した記憶はあまりないのだが、仲間とよく駅前の居酒屋「だるま」に集まっては、始終酔っ払っていた記憶は鮮明に残っている。
高田馬場は、早稲田大学を始めとして、たくさんの学校がひしめき合う学生街だ。毎年、春ともなれば、駅前のビックボックス前は地方から出てきたばかりの若い子でごった返す。
ある日、ホームで電車を待っていると「ニシヒグレザトへ行くには、どの電車に乗ればいいですか?」と、高校生くらいの女の子。「なんですと?ニシヒグレザト・・・・?」生まれて始めて聞く地名である。少ししてから、それは「西日暮里(にしにっぽり)」のことだと気付くのであるが、当時の私は、まだ青森から上京したての18才である。
「わからない=田舎モノ、というふうに思われたら恥ずかしい」という意識で、頭がいっぱいになる。いっそ、外人のふりをしようか、貧血を起こしたふりをしようかと目を白黒させているうちに、ホームに電車がやって来た。
女の子はとても急いでいたらしく、ぺこりとお辞儀をすると電車に乗りこんでしまった。
その途端私は、「あっそうか、西日暮里のことだ」と気付いたのである。だとすれば、その電車は反対方向行きである。ドアからは、乗客が後から後から乗り込んでいく。彼女に伝えようにも、もうすでに彼女は、車両の奥深くぎゅうぎゅう押しこまれて行く。
私は、電車に飛び乗った。人々のぎゅうぎゅうにさらに拍車をかけてぐいぐい奥に進み、彼女を探した。あと、少しの所に彼女がいるのだが、隣のおっさんの肩が顔にあたり、前に進めない。隣で「キャッ」と女性の声。おっさんの肩をよけようとしてもがいた拍子に、どうやら隣の女性のヒップを思いきり触ってしまったらしい。痴漢に間違われ、鬼のような形相でさっきの女の子の所へ辿りついた時、無情にも電車のドアがしまった。彼女に事情を話し、二人で次の停車駅で降りた。
あとで、友人に話すと「あんたも、つくづくばかだねえ。たとえ、逆方向の電車に乗ったとしても、山手線はぐるぐる回ってんだから、必ず着くんだよ。思い込みの激しさでは天下一品だねぇ。あんたのことだから、きっと、これからもいろんなことするんだろねぇ・・・・」と、呆れられた。
(その2へ続く)