vol.39(最終回)
方言は愉し
その2
今、好調な売れ行きを見せている「声に出して読みたい方言」CDブック(草思社)の著者・斎藤孝さんは、同書のなかでこのように言っている。
〜前略〜「方言には、その土地の風土が色濃く染み込んでいる。人間が五官で感じる感覚が言葉に込められている。においや手触り、からだの躍動感や空気。長い年月をかけてその土地の風土でつくり上げられてきた身体の感覚が、言葉の中にしっかりと刻み込まれているのだ。これは、大変な文化遺産だ」。〜後略〜
同書には、9地方の方言が取りあげられているが、伊奈かっぺいさんによる津軽弁のくだりは津軽人が聞いても最高に面白い。もともと、かっぺいさんは津軽弁で古典文学を読むという試みをされていて、地域誌「あおもり草紙」で連載中のコーナー「こてこて こてんこてん」などでも、たくさんの作品を発表されていた。
なかでも、清少納言の「枕草紙」などは絶品だ。
「何んたて春ぁ朝(あさま)が良(え)がべ。 徐々(わんつかづつ)白(しら)ぱちけで行(え)く稜線(やま)コさ 紫色(むらさぎいろ)の雲コあ ばほーっどしたりして。」〜後略
かっぺいさんの朗読が収録されたCDを聞いているうちに、作品中の山は岩木山に思えてくるから不思議だ。これを熊本弁で読むと山は阿蘇山になり、秋田弁になると鳥海山に姿を変えるのだろうか。
体のなかにある自分自身の根っこ。方言は、そんな感覚を再認識させてくれる。
(終)